ぼくはトラック運転手さんでちゅ(第52話)

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『ぼくはトラック運転手さんでちゅ』
「第52話.懐古庵で(その1)懐かしい光景」
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時計を見るともう5時半。
お互いのおむつを交換し合ったももちゃんとぼくは、お尻もふかふかになって、次のアクションプランの話に。
「でさ、この近くに夜景のきれいな所があるって知ってる?」
「えっ、こんな山ばっかりみたいなところで?」
「そう、実はあるんだ。あんまり知られてないと思うけど...」
「へー、ゆうやちゃんてけっこういろいろ知ってるんだ」
「まぁ、あちこち行ってるからね...だけど今日はもう時間ないかな」
「ううん、いいよ。今日は名古屋に帰るだけだし、明日も夕方からの勤務だから...ゆっくり...ゆうやちゃんと...ね」
ももちゃんは軽くウインクして見せました。ぼくは『ゆっくり』っていう言葉に一瞬ドキッとしましたが、
「うん!、だけどどうしようかなぁクルマ、2台だと行動しにくいね」と、悟られないように返しました。
「じゃぁ、私のクルマで。1台のほうがね」
「そ、そうだよね。こんなデカいトラックじゃ取り回しも大変だし、停める場所も限られるし...」
ぼくは、内心レク〇スに乗せてもらえることに大喜び。
「降りる時も手を貸すから...そっち側に行くよ」と言って運転席から飛び降り、トラックの前を回って助手席側へ。そして、外からドアを開けました。
「どうぞ」
「ありがとう」
ももちゃんは既にバックを抱えています。
「うん、そしたら降りようか。まず左手でそこのグリップをしっかり掴んで。そうそう、そして、左足をそこのステップに。そう、次は右足をそこに、...」
ももちゃんは、割りと軽快に降りてきました。二人は、隣に停めたレク○スに乗り換えです。
「じゃ、お願いしてもいいかな」
「えっ?」
ももちゃんはクルッとと向きを変えるとレク〇スの助手席のドアのほうへ。
そして、ぼくに運転席側に回るように手で合図しました。
「運転していいのっ?」
ぼくは舞い上がりました。憧れのレク〇スのハンドルを握れるなんて。
(でも大丈夫かなぁ...乗用車運転するなんて久しぶり...オヤジの...あのボロいの...もう4年も前だよなぁ)
「うん、いいよ。ゆうやちゃんだったらこんな大きなトラック運転できるんだから安心してお任せできそうだし」
「あ、ありがとう。責任重大だね」
「あはっ、大げさ。それに...、女の子が運転してたら格好つかないでしょう、隣に男の子乗せて」
「ま、そうかも...」
ももちゃんは気を使ってくれているみたい。
「それに、ほんとうはね、助手席に座れたほうがいいんだ...」
ももちゃんは一瞬意味深な顔をしましたが、すぐに笑顔になって、
「さっ、乗っちゃって」と促しました。
「う、うん。だけと鍵は?」
「あ、大丈夫」
ももちゃんが、助手席のドアノブに手を掛けると、ピッと音がしてアンロックされました。
(そっかぁ、スマートエントリーシステムだ)
ぼくはその機能は知っていたものの実際に使うのは初めて。
ももちゃんが先にドアを開けて助手席に乗り込んじゃったので、ぼくもあわてて運転席へ。


(おぉー...)
内装の高級感はさすがレク〇ス。皮張りのシートの感触も各部分の作り込みも素晴らしく、ぼくはハンドルを握ってうなっているばかり。
「すごいねぇ。ほんと高級車、いいなぁ。ドアの閉まりからして違うし、ハンドルやシフトレバーだって凝ってるよね」
「うん、私もね、すごく気に入ってるの」
「それに、なんて言うか、このコックビットの空間がさ、凝縮感て言うのかなぁ、高級車なのにスポーティーな感じもあっていかにも走りそうだし」
「そうみたい。私みたいにあんまり運転うまくない子でもスムーズに走れるし」
ももちゃんもニコニコ顔です。
「えーと...エンジンスタートは...」
情けないことに、ぼくが迷っていると、
「始めにブレーキペダルを踏んで...、そうそう、そして、そこの丸いボタンをチョンと押すだけ」
「はい...」
ぼくは言われた通りにボタンを押すと、
♪ブォン
と、V型6気筒のエンジンはあっけなく始動しました。
「私も最初わからなかったの」
「このスタートボタンって、エンジンがかかり終わるまで押し続けなくてもいいんだ」
「そうみたい。チョンと押すだけでうまくかけてくれるの」
「さすがレク〇スだね」
ぼくはシフトレバーをDレンジに入れスタートさせました。
駐車場内をユルユルと抜け誘導路から本線に合流します。軽いエンジン音と共に滑るように加速するレク〇ス。
「いいねー。ほんとスムーズ」
「うん。助手席だとよくわかる。自分で運転してると、こんな時は余裕ないから...。だけど、ゆうやちゃんって、やっぱり運転じょうずね」
「え、そう?」
「うん。なんか、いろんな操作とか確認とか、流れるようにつながっていくから」
「そ、そうかなぁ。クルマがいいんだよ」
「ううん、それだけじゃなくて、なんていうか安心できるって感じ。この車のセールスの人が運転した時は、ムダにクルマがグラグラ動いたり、ブレーキがきつかったりしたもん」
「ありがとう。だけど、そうやって見られてると緊張するなぁ...あっはっは」
ぼくが照れながらレク〇スを走らせていると、すぐに東名相良牧之原ICに到着。ここで高速を降りたぼく達は、国道473号を北上し金谷方面に向かいました。


この辺りはお茶畑が広がるのどかな丘陵地。
昼間の明るい時間なら一面の緑が広がって深呼吸したくなる光景ですが、もう夕刻となったこの時間では、街灯が少ないこともあってなんとなく薄暗いトワイライトの時空になっていました。もう少し早い時間だったらその感動を共感できたのにね。
(でも、この先の夜景はきっと気に入るぞ...)
ぼくは気を取り直して、この先のシナリオをいろいろと考えていました。でも...。
「夜景にはちょっと時間が早そうだなぁ...まだ夕焼けの時間だし」
(茶畑の光景には遅いし、夜景には早いし、もう間が悪いなぁ...)
「ここからは近いの?」
「うん、このまま行ったら20分くらいで着いちゃうからね、もっと暗いほうが雰囲気出るかも」
ぼくは時間を読み違えたことをどうやって穴埋めしようかと考えました。
(そうだ、あそこなら...)
「じゃぁ、ちょっと寄り道して行かない...すぐ近くにできたばかりの空港があるんだよ」
「もしかして静○空港?」
「ピンポーン、よく知ってるね」
「名前だけね。静岡県に空港ができて便利になったってテレビでやってたの。だけど、この近くにあるなんて知らなかった」
「ほんと近いんだよ。実は、そこの建設現場には1年くらい前まで仕事でよく来てたんだ」
「あ、それでよく知ってるのね」
「うんまぁね」
お茶畑の中のアップダウンのある道をゆっくり流して行くと、前方に青い案内看板が見えました。
『静○空港 直進5km』の表示。
でも、ぼくはその表示を無視し、交差点を右折して林の中の道に入って行きました。
「あれ?、空港ってまっすぐだったんじゃない?」
「うん、さっきの看板通りでもいいんだけど、実はこっちの方が近道でね、この辺りの人しか通らないような道だけど...、で、この先に当時建設現場があって、その奥が空港ターミナルなんだ」
「へぇー」
「まぁ、よく来てたのは1年前だから、ちょっとは変わっているかもしれないけど、何とか行けると思うよ」
「うん。...でもぉ、ずいぶん暗くなってきたね」
うっそうとした木々に覆われたその道は昼でも薄暗く、初めて通るにはちょっと抵抗があるかもしれませんね。まして、夕刻のこの時間ともなればなおさらです。
「そうだね、街灯もなんにもないしね。でも、この先少し行くと、大きなカーブの先に分岐があるから、そこからは開けて少しは明るくなるよ」
ぼくにとって通い慣れたその道は、ほとんど当時の記憶のままでした。
しかし、カーブを抜けると、
(えっ?)
空港への分岐点のはずだったそこには『この先、通行止め』の看板が。
(あちゃー)
「どうしたの?」
ぼくの顔色から異変を察したももちゃんは、ちょっと心配そう。
「ごめん、道が変わってて...」と言いかけてふと見ると、右奥に小さな『空港へのまわり道』の看板を見つけました。天の助けです。
「いいよぉ、無理しないで。さっきの交差点まで戻れば」と、ももちゃんは冷静な判断です。
「あ、いや、あそこ、『空港へのまわり道』って看板。行けそうだよ(よかったぁ)」
と、格好つけたぼくはその小さな看板に賭けてみることにしました。
「...うん」
ももちゃんは、ちょっと不安な顔をしましたが、すぐに笑顔になって、
「ゆうやちゃんと一緒だから大丈夫だよね」
「うん、なんとかなるよ」と、ぼくは内心の不安を顔に出さないようにしながら、まわり道へ入って行きました。


深い林の中の道は、これまで通ったことのないルートでした。
(こんなとこに道があったんだ...)
ナビの画面を見ると、自車位置は山の中の道のない所をほぼ東に進んでいます。
(まぁ、なんとかなるな...方角は合ってるし)
ぼくは、意地を張って進み続けたものの、さすがに不安になってきました。
(ん?)
ちょうどそこには古びた看板が。『昭和懐古庵むつき別館』って書いてあります。
(懐古庵? むつき別館?...なんだそれ...でも、ちょっと道を聞いてみるか)
その何かの博物館のような敷地の前でクルマを停め、
「ももちゃん、ちょっとここで待ってて、道を確認してくるから」
「いいよ、待ってる」
ぼくは、エンジンをかけたままレク○スから降り、はだか電球の点いた玄関に向かいました。
そこには、
『昭和の良き時代に思いを馳せ、これからの皆様の時間を豊かにしていただくための契機になれば...『昭和懐古庵むつき別館』へようこそ』っていう説明書きと立派表札が。
そして、その横には小さく、
『一般公開:10時~17時』の看板もありました。
(へー、こんなとこに博物館かぁ? でも、もう閉館してるし)
ぼくは、だめもとで玄関の横の案内所に顔を出しました。
「すみませーん」
「はーい、申し訳ありません、本日はもう閉館でございまして。でも、よろしければ、どうぞご覧ください」
もの静かで上品そうな女性は、ていねいに応対してくれました。
(ちょうど母さんくらいの年だな...)
「あ、あの、実は、道を聞きたくて」
「どうぞどうぞ、この辺りはわかりにくうございまして」
「空港に行きたいんですけど、この道を行けば...」
「はい。以前は行けたのですが、空港の工事が済んでこの先も閉鎖になったと伺っております」
「あぁ、そうだったんですかぁ...」
ぼくは、がくっと肩を落としました。
「お客様は、お車でいらっしゃったのですね。あちらにお停めになっているあの赤い」
「ええ」
「お連れ様がお待ちのようですね」
「はい、ちょっと聞いてくるって、待たせてます」
「そうでございますかぁ...。いずれにしても、この道を戻られるしかありませんので...、いかがでしょう、もしお時間があれば、この中の展示を簡単にご覧になってから一休みされて行かれては」
「えっもう閉館ですよね」
「ええ、でも、よろしければどうぞ。私一人しかおりませんのでたいしたど対応はできませんが」
ぼくは、夜景までまだ時間があるし、無理に空港に行かなくてもここで時間がつぶせるんならいいかって。
それに、なんとなく親しみを持てるような展示もありそうで...、一休みもしたいしね。
「じゃぁ、ちょっと相談してきます」
「はい、どうぞどうぞ」
ぼくはももちゃんの待つレク○スに戻って、助手席の窓越しからこの先には行けないことを話しました。
「うん、わかった。仕方ないじゃない」
「ごめん意地張って。やっぱり、さっきの分岐で戻ればよかったんだ」
「ううん、ゆうやちゃんのせいじゃないよ。工事で変わっちゃったんだから」
「うん...、ここから道を戻るんだけど、ちょっとね、ここ見てから休憩していかない? 係りの人もていねいに応対してくれそうだし」
「え、いいの? もう終わりじゃない?」
「うん、いいみたいだよ」
「じゃあちょっと。私も少し気になったの。ここ、博物館か何かかな?」
「うん、あそこの玄関のところに看板があって、『昭和の佳き時代の』なんとかって...、近代歴史館みたいな感じだよ」
「やっぱり、そんな感じかなって」
ももちゃんは、助手席からボタンに手を伸ばしてエンジンを止め、すぐに降りてきました。
「じゃぁ、ちょっとね」
二人はレク○スをその場に残し、玄関に向かって歩き始めました。
「だけどぉ、『昭和懐古庵むつき別館』って、またレトロな名前だね」と、ぼく。
「そうね。『懐古庵』っていうと、昔の思い出や生活感を振り返って癒されるような展示内容かなぁ」と、さすがももちゃん。
「でも...『むつき』って何かな? 地名?」とぼくが言いかけると、係りの人が出てきて迎えてくれました。
「いらっしゃいませ」
さっきは、案内所の小窓越しだったのであまり見えませんでしたが、その人は、藍染めの着物に白いエプロンのような前掛けをつけた『昭和のお母さん』っていう感じ。
凛と立つ姿は、それ自体が展示品というと失礼ですが、楚々として上品な良妻賢母の典型的なイメージです。
(ふーん...)
ぼくは、実家の母さんのことをちらっと思い出しました。
(最近帰ってないよなぁ...)
ももちゃんも何か思い描いているようです。
「さ、さ、どうぞこちらへ」
「でも、あの、入場料とか」
ぼくは、その昭和のお母さんに尋ねましたが、
「お気になさらずに、本日はもう閉館時間ですし、案内所は閉めましたので、誰も入ってきませんから」


旧家の立派な門から入ると、目の前に大きな案内看板がありました。
昭和のお母さんが説明を始めます。
「『昭和懐古庵むつき別館』へようこそいらっしゃいました。こちらは、昭和の佳き時代に思いを馳せ、これからの皆様の時間を豊かにしていただくための契機になればとの思いで開設した展示施設でございます。
主には、昭和30年から50年くらいまでの当時の生活や風習に関する写真や道具の展示と、ご希望に合わせた『体験』も可能です。姉妹施設としましては『昭和懐古庵本館』と申しますのが、こちらからお車で東へ20分くらい離れたところにございまして、主には政治経済文化面での展示になっておりますので、お時間のありますときにお立ち寄りください。
さて、当の『むつき別館』では生活感を大切にしておりますので、あえてわたくしどもの住居や蔵等の作りや道具類を直接ご覧いただいて、当時の生活様式に触れていただくことを目的としております。ごうぞごゆっくりとご覧いただきますようお願い致します」
昭和のお母さんは一礼して、にっこりと。
その完璧な説明には思わず拍手したくなるほどでした。
(毎日何回も説明してるんだろうな...)
そして、今度は少しリラックスした話し方で、
「改めまして、私はここの広報担当をしております「高松のり子」でございます。と申しましても、主人が以前この『むつき別館』の館長をしておりましたので、私は説明係り兼庶務係りですが...。今日はもう閉館時間ということで、お客様と楽しい時を過ごしたいと思います」
前半の説明と違って、ちょっとアドリブが入っているようです。
「どうもありがとうございます。でも、たいへんですね」と、ぼく。
「いえ、こんな山奥ですから、お見えになる方はほんの少数ですし、ここの展示自体も私の家そのものですから、それほど苦になりません」
「あー他にもありますよね。岐阜県の白○郷とか、そこにお住まいになりながら文化財を守ったり、展示したり」と、利発なももちゃん。
「そうでございますね。実はここは、奥が寺になっておりまして、懐古庵という名前も、寺付属の昔の寄り合い所のようなものが由来となっております」
「へー、そうなんだぁ」
そして、ぼくが『むつき別館』って何?って聞こうとした時、
「それでは、中庭のほうからご案内させていただきます。こちらです、どうぞ...」と、案内看板の横から誘導してくれました。


そこには、当時どこにでもあった裏通りの町並みを再現したセットが。
(おー...)
「うわー! なんだかレトロな感じね」と、ももちゃんも珍しそう。
「うん。映画で『〇丁目の夕日』って、あったじゃない、あれと似たような雰囲気だよね」
「ほら、見て見て! あの赤いの...」
「ポストだよ、懐かしいなぁ。むかしぼくの実家の近くにもあったんだ。だけど、ぼくが見た時はもうかなり古ぼけてたから、ここのも何十年も前のものなんだろうね」
円筒形の赤い郵便ポストは、角のたばこ屋さんの前で強烈な存在感を放って立っていました。
「あういうのって、今の四角いのよりずっとカワイイね」
「なんか、ほのぼのするよなぁ...」
感慨深く見渡していくと、店の壁には定番の、金〇蚊取線香とオロ〇ミンCの広告が。ただし、紙じやなくてトタン板製。角の所が少し錆びていて、時代を感じさせます。
そして、更に見渡していくと、
「おっ! すげー」
「どれどれ?」
「あれ」
「あーっ、カワイイー」
酒屋さんの横には、古ぼけたトラックが。
前1輪、後ろ2輪のオート三輪です。前輪はバイクのようなサスペンションがついて、メカ好きなぼくにはたまりません。それに、青緑色の車体と丸い2灯の大きなヘッドライトが、まるでカエルのようなかわいい顔に見えます。
「あれね、『オート三輪』っていって、おじいちゃんの写真にも何枚か写ってたよ。まだ残ってたなんてすごいなぁ」
「へー。私、初めて見た」
「もう、何十年も前のだからね。動くかどうかわからないけど...」


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E4%B8%89%E8%BC%AA


ももちゃんとぼくが珍しそうにキョロキョロしていると、高松さんが説明を始めます。
「いかがですか。ここの展示はむかし近くにあった商店さんの建物の一部を移設したもので、それをそっくり当時のままに残しております。それに道具類も実際に使われていたものを置いておりますし、まだ使えるようなものばかりなんです」
「えっ、じゃぁもしかして、あのトラックも動いたりして?」
「はい、たまにこの敷地内を走らせています」
「へーすごいなぁ。かなり前のでしょう」
「昭和32年製のダイ○ツ『ミゼ○ト』という軽トラックです。実は古い話しでございますが、私が嫁入りした時に荷物を運んでいただいたのがあの型だったので、よく覚えております」
「昭和32年かぁ、まだ生まれてないし」
「そうでございましょう。お二人ともまだお若いですから、ご両親くらいの年代ならここにある道具とかいくつかは使われたかもしれませんね」
高松さんは、回想しながら何か遠くでも見るような感じで話してくれます。
ぼくもうなずきながら、
「なーるほどぉ、ほんと昔の写真に出てくるようなものばっかり。ぼくが使ったことあるのは...、やっぱ見当たらないなぁ」
「...」
高松さんは、一瞬何か言いたいような表情をしましたが、すぐに説明員の顔に戻って、
「それでは、こちらのほうへ...」
ももちゃんとぼくは、高松さんの後について『展示室』と書かれた入口から入っていきました。


そこは大きな土蔵の中。しっとりとした空気と静まりかえった独特の空間でした。
いくつもの展示台やガラスケースの中には、生活用品やむかしのお札や貨幣が、壁には当時の写真や新聞記事なんかもあり、セピヤ色の雰囲気が一杯でした。
(...うーん、これが昭和かぁ...)
ぼくがまだ小さかった時代なのではっきりとした記憶はありませんが、展示品それぞれが放つオーラが往時のイメージを語りかけています。
「へー...」
ももちゃんも、なんとなくその空気を読んで感じるところがあるんでしょう。
「...なんだか懐かしい感じ。おばあちゃんを思い出しちゃった...」と、ポツリ。
「ぼくもだよ、やっぱ、あったかいっていうか...」
「うん、そうよね。この写真なんかも、なんだかのんびりして...」
「そう、今みたいにギスギスしてないっていうか、心にゆとりがあったのかもね。それと、希望とか、将来に向かっての情熱みたいなものも感じるなぁ」
ぼくたちは、ゆっくりと歩きながら展示品を一つ一つのぞき込んでいきます。
「ねえ、これってテレビよね。箱が大きいのに画面がこんなに小さくて」
「そう、むかしはブラウン管って言って奥行きがあったよね。これだって50センチくらいあるけど、今なら5センチだもんな。すごい進歩」
「うん。パソコンなんてなかったのよね」
「そりゃぁもう、ほら、このソロバンや計算尺が主役だったんだから」
ガラスケースの中には、使い込んだ道具が整理して展示されています。ももちゃんは、辺りを見渡しながら、
「ねえねえ、これって洗濯機よ。むかしから白かったのね」
「白モノ家電っていうくらいだから。ここ、ほら、洗濯槽の横に2本のローラーが並んでついてるでしょ、洗濯物を通して絞れるようになってる」
「へー、おもしろーい。ハンドルをくるくる回して間を通すと絞れるのね。これが脱水機の代わりなんだ」
そんなぼくたちを見ながら、高松さんは傍らでずっと微笑んでいます。
「ねえ、これ花嫁衣装よ、綺麗ね。最近はあまり着ないみたいだけど、やっぱりいいなぁ...」と、ももちゃんは立ち止まってじっと見ていました。
「そういえば、ぼくの友達の結婚式でも花嫁さんはドレスだけだったな。でも、着物もいいよね。一世一代の挙式にはこんなのがふさわしいんだろうなぁ」
「そうよねぇ。私だったら...」
ももちゃんは、花嫁衣装をじっと見つめて一瞬何か考えてるようでしたが、すぐにくるっと向きを変えて、横に立っているマネキンに目を止めました。
「あ、これって、高橋さんとよく似てますね」
「そうです。これは藍染めで、むかしはほとんどこればかりでした」と、高松さんは横から話に加わります。
「むかしおばあちゃんが着てたような気がする...」と、ももちゃん。
「うん、ぼくも覚えてるよ。エプロン姿で家事をやる姿」
「そうですね、これは『割烹着』と申しまして、今で言えばエプロンですけど、正面から腕まですっぽり覆うので割と便利なんですよ」
「そうなんだ。まっ白なのがいい雰囲気ですね。メイド服っていうのと少し似てて...」
「あー、ゆうやちゃん、ダメよそんなのと比べて。でも、もしかして、そういう趣味も」
「ち、違うよ。ただ、ぼくは...」
「あはっ、冗談よー。このマネキンさん、良妻賢母のお母さんっていう感じよね」
「そう、そのリョウサイ...(えっ?)」
ぼくは、その奥に積まれた白いものが目に入って固まってしまいました...。
それは、淡い水色やピンク色の細かい柄や、雪の花のような三色の模様、それに藍色のしぼり柄がある白い布地。小さなタンスの横の座布団の上にきちんと畳まれて置かれています。
(うっ...)
それは、近づくまでもなく『おむつ』でした。
そして、その傍らには、ベビー服やおむつカバーが並んで広げられています。
(うわー、よだれかけや哺乳瓶まであるじゃん...)
ぼくは強い引力に導かれるようにふらふらっと前へ進み、気が付くとその布おむつやおむつカバーをじっくり観察していました。
それらは左右に2つづつホックのあるオープン型や、股おむつカバーの数々。更によく見ると、表地はかわいい動物柄や花柄で、内側は皆一様にヌメヌメっと光っています。
(あっ!ビニール張りだっ)
そうです、そこにあったのは昔懐かしい内側がビニール張りのおむつカバーでした。しかもすごいたくさん。
(...)
ぼくはその瞬間、あの青森県の順子さんの実家で、おばあちゃんにしてもらったビニールのおむつカバーの感触を思い出してしまいました。
(ビニールの...)
(おむつカバー...)
股間に貼り付くビニールの感触と出ちゃった時のにゅるにゅる感...。
(あぁ...)
ぼくは、お〇ん〇んがおむつの中で徐々に固くなってきているのに気が付きました。
(こんなところで...)
でも一旦その刺激的な感触を思い出してしまったからには、自分ではどうしようもありません。
(やばい...)
それは、どんどん固く大きくなっていきます。
(痛っ、いたたた...)
さっき、ももちゃんがしっかりあててくれたおむつのせいで、ぼくのビンビンに立とうとするお〇ん〇んは、カバーの中で行き場を失い屈曲しながら悲鳴を上げています。
(いたたっ...)
こうなると手直しするしかありません。でも、二人の女性のいる前で露骨に股間を触るわけにもいかず...、
「ちょ、ちょっとトイレにっ!」と窮場をしのぐことに。
「あ、お手洗いでしたらその横の通路の奥で...」って言う高松さんの声も上の空で、ぼくは腰が引けた変な格好のままその場を逃げるように離れました。
ももちゃんは、「なんでトイレ?(おむつしてるのに?)」っていう顔してましたが...。


トイレの個室に駆け込んだぼくは、急いでジャージを下ろし、おむつカバーの前を開いておむつに絡んだお〇ん〇んを開放しました。
「ふー...。(折れるかと思った...)」
一旦、ゆっくりと天井を向いて大きく息をついてから、視線を落として自分の腰のあたりをを見ると、開いたおむつが膝まで下ろしたジャージの前にぶら下がり、お尻がおむつカバーに包まれた恥ずかしい姿。立ったままのおむつ交換スタイルです。
しかも、お〇ん〇んは更にビンビンになって前に突き出したまま荒れた呼吸に合わせてゆっくり振れています。
(いかん、いかん...)
自制を利かせようとしても、あの展示を見てしまったぼくには無理でした。
(まぁいっかぁ、後で替えれば...)
前に垂れたおむつを引き上げて股間に軽くあて直し、それでお〇ん〇んをくるんで手のひらで握りました。
(あぁ...)
目を閉じると、内側がヌメヌメっとしたおむつカバーが瞼の奥に浮かんできそうです。
(ビニールのおむつカバー...にゅるにゅるなんだよなぁ...)
青森のおばあちゃんにしてもらった感触もまだ鮮明に残っていました。
ぼくは、おむつの上から握ったお〇ん〇んがあたかもビニール張りのおむつカバーの中にあるかのように妄想しながら、往復運動を始めました。
(あ、あっ...おばあちゃん...ビニールの...おむちゅ替えて...)
既に準備体操を終えていたぼくのお〇ん〇んは、短時間のピストン運動であっという間に発射。おむつの中はにゅるにゅるになってしまいました。
(あーあ...)


ぼくは息を整えてから、濡れたおむつを替えずにカバーの前を閉じ直してホックを止めました。
(うっ...)
にゅるにゅるベチャベチャのおむつは、少しでも動くとからだ中の全神経が股間に集中するかのように強烈に主張してきます。
(うわっ...)
なので、普通に立とうとしても思わず足が半開きでお尻を突き出したような怪しい姿勢になってしまいます。
(大丈夫かなぁ...)
ぼくは、この状態が二人に悟られないか少し心配でしたが、戻らないわけにはいきせん。
(行くかぁ...)


個室の中で快感と少しばかりの自己嫌悪を味わったぼくは、濡れたおむつのまま高松さんとももちゃんのところへ戻りました。
「...そうですか、ご苦労されているんですね」
「ええ...」
二人はおむつの展示の前で話しが弾んでいるようです。
ぼくは、何事もなかったように合流すると、また横目でおむつをチラチラと見始めました。
「いかがですか?」
高松さんに声をかけられて、ぼくはハッとしました。おむつに興味があるのがばれたような気がして、
「あ、おむ、じゃなくて...、ここの展示はみんな素晴らしいですね。懐かしいなって」
「ありがとうございます。展示品もよろこんでるんじゃないでしょうか」
「そ、そうですよね」
ぼくは自分でもかなり動揺しているのがわかりました。
(やばっ...)
それでも高松さんは何食わぬ顔で続けて、
「むかしは...、赤ちゃんのいる家庭ではどこでも物干し竿一杯に『おむつ』が干してありましてすぐにわかったものです。今はもうほとんど見なくなりましたが...」
「そ、そうですね。今は紙だから...」と、思わず言ってしまいました。
「えっ、よくご存じですね。小さいお子様をお持ちで」
「あ、いえ、て、テレビで見て...」
「そうでしたか...」
高松さんは、ぼくの顔と腰の辺りを交互に見て何か言いたそうでしたがすぐにニッコリ。そして、
「こちらの写真でも、その懐かしい光景が展示してありますので...」と、視線を促しました。
(ふー...、あせったー)
そこには、民家の庭先で風に揺れるたくさんのおむつが写ってました。
その横のパネルも同じような懐かしい写真。
(2枚...)
そして更に横の写真もおむつ干しでした。
(3枚も?...)
ぼくは、限られた展示スペースにおむつの写真パネルが3枚も並んでいるのが奇異に感じました。
でも高松さんは意に介さず、
「いいですよねぇ。私はこのような光景を見ると何かほっとします」と、遠くを見るような眼差しでパネルを眺めて言いました。
「そうですね...」
(...ん?)
ぼくは、3枚目の写真が妙に色鮮やかなのに気が付きました。
(これは?...)
他の2枚がセピア色なのに、その写真だけ最近撮ったような感じ。
(...なんで??)
隣りを見ると、ももちゃんは平然とパネルを見ています。
すると、高松さんはぼくの懸念を鋭く察して、
「お気付きでしょうか。先ほど、こちらのお客様にはお話ししましたが、このパネルの写真だけは最近撮ったものです」
「えっ、でも...」
ぼくは、こんなおむつ干しの光景なんか最近はめったにないはずなのに...って思いました。
「あのー、どこで?。あ、いや、最近にしては珍しい光景だななんて思ったもんですから」
「ああ、そうでございますよね。実は、この奥の部屋の縁側から撮ったものです」
(この家の縁側って? ここには赤ちゃんは住んでないんじゃないの?? じゃぁ誰の???)
「ここに展示しているおむつ類は、1週間毎に入れ替えています。どうしてもホコリが付いたりしますから、そのたびにお洗濯して裏庭に干すんですよ。やっぱりおむつは白い清潔感が大切ですからね」
「そ、そうでしたかぁ」
「ええ、何か?」
「い、いや、なにも...」
(だよなぁ...びっくりした)
「それでは、今お話しした部屋へ、いかがですか。畳がありますので休憩もできますから」
「ええ...」
ももちゃんとぼくは互いに顔を見合わせて、『いいよ』って感じでアイコンタクトしました。
「狭苦しい部屋ですが、実は私も一休みしたくて...。よろしいでしょう。」
「でも、もうご迷惑じゃあ...、閉館時間もだいぶ過ぎて」と、ももちゃん。
「あ、いえ大丈夫です。ごゆっくりしていただければ」
「そうですかぁ、じゃぁ...」と、ぼく。
「では、こちらへどうぞ」
ぼくたちは通路のほうに向って歩き始めました。さっきのトイレの横を過ぎると、高松さんは振り返りながら、
「あの、わたくし、今日はとてもうれしゅうございました。最近は...、ここを訪れる方もめっきり減りましてね、しかも入館されましても、お客様方のように展示を熱心に見ていただける方はほとんどありませんの。しかも、あのコーナーは...」
「そうだったんですかぁ...(あのコーナー...?)」
ぼくはちょっとひっかかりましたが、まあいっかって感じで高松さんの後をついて堅木張りの通路をゆっくり歩いて行きました。
その奥には『業務用』っていうプレートが貼ってある部屋が。高松さんはその扉の鍵を開けて、
「どうぞ、中へ...」と、ぼくたちを招き入れます。
そこは、業務用っていう感じは全くなく、普通の一軒家のよう。
「どうぞ、お上がりください」
玄関で靴を脱いで廊下に上がると、左右に畳の部屋がありました。
高松さんは、
「こちらの部屋で、一休みなさってください。今、お茶をお持ちしますから」と、言って奥へ立ちました。
「あっ、お構いなく」と、ももちゃん。
(...でも、いいのかなぁ)
だって、ただ道を聞きに来ただけのにね、なんだか悪いような気がして...。


その部屋は8畳くらいの和室。
大きくて立派なタンスや小振りなテーブルとテレビ...。
そして、裏庭に面する窓からは、縁側の先に物干し台が見えました。
(あれかぁ...)
それは、もう、かなり薄暗くなってきたので見えにくいものの、確かにさっきの写真の光景でした。
(あの物干し竿におむつがたくさん...)
ぼくが、想像し始めると、
「ねえ、ゆうやちゃん」と、ももちゃんがぼくにヒソヒソ声で耳打ちしました。
「はい?」
「なんか変だったよ」
「何が?」
「何がって歩き方が。もしかして、おむつ濡れてるんじゃない」
「(げっ)...」
いきなりの突っ込みに、ぼくは言葉に詰まりました。
廊下を歩いていた時の変な姿勢をしっかりチェックされていたんですね。
「濡れてるんでしょう、おむつ。隠してもわかるんだからぁ...さっきしちゃったのかな?」
「うん...」
「ほらー、しょうがないわねー。どこかで替えなきゃ...」
その時、高松さんが奥から戻ってきました。
「さぁお茶にしましょう」


高松さんは、お茶を入れながらゆっくりと話し始めます。
「すみません。こんな狭苦しいところで」
「あ、いえ、そんなこと...。ゆっくりできて助かります」と、ももちゃん。
「そう言っていただけると...。この部屋は、元々、管理人さんの宿直室でした。でも、もう数年前から昼間だけ来てもらうようにしています。入館者も減りましたし...。なので今は私が代わりに住んでいます。...あ、お茶どうぞ...」
「すみません」
ぼくたちは、お茶をすすりながら和ごんできました。
「...あの、ご家族は別に...」と、もももちゃん。
「ええ、主人は昨年に他界しまして...。実はこの敷地の奥に主屋がありますが、そこには長男夫婦が住んでおります。まあ、お互い気を使うのもなんですので、私がこちらで住んでいる次第で...」
(いろいろあるんだな...きっと)
高松さんは、窓の外をぼんやりと見つめてから、更に、かみしめるように話します。
「あのぉ...、先ほども申しましたが、わたくし、今日は本当にうれしゅうございました。展示を熱心にご覧いただいたのもそうですが、...、実は...、私以前子供を亡くしまして...」
「お子様を?」
「はい。もう20年も前のことですが、当時9才と7才の姉弟で...」
「お二人も?」
「ええ、奥の離れで火事がございまして...、主人と私は必死で助けようとしたんですが火の回りが早くて...。長男だけは自力で逃げ出して無事だったのですが...」
高松さんは、目頭を押さえました。
「...それはお気にの毒なこと...」と、ももちゃん。
「あ、もう昔のことですから...。それで...、今日お二人にお会いした時、何かそのぉ...強く惹かれるものがありまして...、生きていればちょうどお二人くらいかと。 ...あ、申し訳ありません、失礼なことを」
「あ、いいんです。おつらいことがあったんですね。私たちでよければ、お話し相手になれるかもしれません。ねっ、『ゆうやちゃん』」
「うん、そうそう。ぼくも、久しぶりになんだかあったかい空気に浸れてうれしいです」
「ありがとうございます。ほんと今日はわたくし自身不思議なくらいリラックスさせていただいちゃって...」
高松さんは、思いがけず出会ったぼくたちに身の上話を一気に語って、胸のつかえがとれたようです。
「なんか偶然ですよね。ぼくが道に迷ってこちらに尋ねて来なければ、こんな出会いはなかったし...」
「そうですね。お目にかかったときの第一印象が、すごく優しそうな感じの方で、なんと言いますかその、ほんわかとしたイメージで...。つい、中にお招きしたくなったんです」
「あはっ、ほんわかだって」と、ももちゃんが横で笑っています。
「そうかなぁ...」
「そうよ。ゆうやちゃんってほんとそういう感じ。私だって最初そう思ったよ」
高松さんも、目を細めます。
「あらあら、仲のいいこと...」
「それにしても、すごい展示ですよね。懐かしいものがたくさんあって...。あのオート三輪なんて、動くとは思わなかったし」
「ありがとうございます。そう言っていただけると展示した甲斐があります」
「それに、日用品なんかもたくさんあるのよね。洗濯機とか、脱水ローラーなんか珍しかったし、私なんか、あの花嫁衣装あこがれちゃった」
「今ではもう見当たらないものも多いですから。でも、あまり生活感が強いと、目に止めていただけないところもありして...、実は、限られたスペースの中で展示品を選ぶのも苦労しています...」
「そうでしょうね。普通の生活を見せるって案外難しいのかも」
「ええ...」
高松さんは、視線を庭のほうに向けて続けます。
「でも、お二人は熱心に見ていただいていましたね。あのコーナーも」
「あのって...」
「昔の子供部屋をイメージしたコーナーです。ベビー服とかも...」
ぼくはドキっとしました。ももちゃんも言葉に詰まっているみたい。
「あそこで立ち止まられるお客様は少なくて、展示を縮小しなければいけないのかなと考えておりました。でも、お二人のような方が見えるのなら、もう少し続けてみようかと...。」
「あ、あの、可愛いらしくて、つい見ていました。ちっちゃい赤ちゃんの服とか...」
ももちゃんは、それらしくかわしました。ぼくも、
「そうそう、なんだか昔のおばあちゃんのいたころの部屋の雰囲気で...」
「そうですか...」
高松さんは一瞬ぼくのお尻のほうに視線を向けたように見えました。
「あの子たちも、そんな感じを抱いていたのかも...」と、高松さんはポツリと。
「あの子たちって、先ほどのお話しの亡くなられた...?」と、ももちゃん。
「あ、ええ...。手のかかる子たちでした。小学生になっても『おむつ』が取れなくて...」
ぼくはまたドキっとしました。
「上の子は夜だけでしたが、下の子は学校に行く時もしていましたし、いつも庭にはおむつがたくさん干してあって恥ずかしいくらい...」
高松さんは、ぼくのほうに視線向けたので、
「そ、それはたいへんでしたね。でも、小学生ならまだかわいいもんじゃありませんか。あはは...」と、ぼくは動揺しています。
「そうですね。手のかかる子ほどかわいいって申しますものね。それに、...大人でも...」
(うっ...)
高松さんは明らかにぼくのお尻の辺りを気にしているよう。
(もしかして...)
ぼくは、その視線のおかげで意識が股間にいってしまいました。
ここに入館する前に少しちびっていた分に加え、さっきのトイレでのイタズラの結果が残ったままのおむつはにゅるにゅるベタベタ。少し片寄っているせいもあって、座りも悪く落ち着かないもんですから、無意識にお尻をずらしたり傾けたりしていました。
(そろそろ替えないと...)
そんなぼくの様子を察したのでしょう、ももちゃんは『大丈夫?』っていう視線を送っています。
そして、高松さんも何か察したよう。
「あの、失礼ですけど...、御手洗いであれば、そこの玄関の横にもありますので...。それか、この部屋を使っていただいても結構です」
「えっ?この部屋?」
ももちゃんとぼくはまるでシンクロしたように言ってしまいました。
でも、高松さんは平然と、
「早めに交換されたほうがよろしいかと...」
「えっ...交換って...」
「はい、濡れたままでは気持ち悪いんではないかしらその『おむつ』」
「えーっ? お、おむつ? そ、そんなの...」
「ご安心ください。私の他にはもう誰もいませんし...。すぐにわかりました、お客様がおむつあてていらっしゃること」
(げっ...)
「最初にお会いした時、細身の体型の割に腰の辺りだけかなり膨らんでいるのが引っかかりましたし、館内をご案内している時にも歩き方で察しました。しかも、そうやって座りの悪そうなご様子ですので...」
(あちゃー)
「私も子供を3人育てましたので...。おむつが濡れた子の仕草というのは、母親ならだいたいわかるものですから」
ぼくは、恥ずかしくなって下を向いてしまいました。
「いかがですか、お早くしたほうが...」
もう観念です。完全にばれてたんですね。それでもぼくは、
「でもぉ...替えはクルマの中だし...」と、おむつを認めつつも抵抗します。
「あ、それなら大丈夫です...」
高松さんは立ち上がって、横の押し入れをすーっと開けました。
「ほらここに...」
そこには、紙おむつのパックが。
(ぼくが紙おむつあててると思ってるんだ...)
「こういう仕事をしておりますと、病気や障害をお持ちの方とかも来館されますし...。状況に合わせて対処できるようにいろいろ備えてあります。ですから遠慮なさらずに、ね」
(やっぱり...どこか体が悪いんだと思うよなぁ...大人なのにおむつしてるなんて)
ぼくは、ももちゃんのほうにちらっと視線を向けて助けを求めましたが、『もう抵抗しても無理』っていう感じで返されました。
「ええ、じゃあ...」
ぼくは追い詰められて答えました。
「それでは替えて差し上げましょう」
「えっ、いや、大丈夫、自分でやりますから」
「そうですか...。こちらのお嬢様も一緒に替えて差し上げればいいかなと思いましたのに」
「えっ?」
今度はももちゃんに衝撃が走りました。
「わ、私は...そんな」
「お嬢さんも、そうなんでしょう?」
「あ、いえ...」
ももちゃんもぼくに助けを求める視線を送ってきましたが、どうすることもできずただ目が泳ぐだけ。
「お嬢様がさっきのおむつの展示を食い入るように見る目は半端ではなかったですし、こちらのお客様、ゆうやさんでしたっけ...、と同じように、おむつをあてていることは歩き方とかわいいお尻ですぐにわかりました。それに...、今ここで、...話の合い間にこっそりしちゃったんでしょう?、一瞬動きが止まって腰の辺りが微妙にぷるぷる震えていましたので...」
「えっ、またしちゃったの...」
ぼくは、ももちゃんが話をしながらおもらししてたなんて気が付かなかったもんですから、思わず言ってしまいました。
「『またって』、ゆうやちゃん...」
「あっごめん」
ももちゃんは泣きそうな顔になりました。
「あらあら、そんなお顔されなくても...。あまりお気にされることはありませんよ。世の中いろいろな方がいて、それを使わざるを得ない方もたくさんいますし、自らの趣向でお使いの方もね。それに私自身はそのような対応にも慣れておりますから...。すぐに替えたほうがよろしいかと」
「でもぉ...」
ももちゃんはまだ抵抗します。
高松さんは少し考えてから、
「じゃあ、こうしたらいかがでしょう。お二人並んで替えれば恥ずかしくないんじゃないかしら」
「あ、いや、そういうことじゃなくて...」
「どのようなことで?」
「あの、ぼくたち、お互いにおむつ交換し合ってるので、特に、その...交換するとこを見られてもいいんですけど...」
「じゃあ、大丈夫ですね。さあ、ここに並んで横になって下さい」
ぼくは、もう抵抗しても仕方がないなっていう思いと、本当は替えてほしいって気持ちもあって素直に横になりました。ももちゃんも同じように横になります。
「はい、じゃあ、替えてしまいましょう」でも、そのまま少しお待ちいただけますか。ちょっと準備がありますから」
と言って、高松さんは立ち上がると、廊下の奥のほうへ行ってしまいました。


それにしても、思いがけないことになってしまいました。
二人で並んでおむつ替えてもらうなんて...。


ももちゃんとぼくは座布団の上に横になりながら、顔を見合わせてこの先どうなるんだろうって思いました。


~~~『ぼくはトラック運転手さんでちゅ(第53話)』に続く


このストーリーはフィクションです。

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