ぼくはトラック運転手さんでちゅ(第20話)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ぼくはトラック運転手さんでちゅ』
「第20話.ひろこちゃんとドライブ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あ、ゆうやちゃんの、あれね。乾いたら現場の事務所に届けておいてあげるから、心配ないよ...」


ぼくは食堂から一旦2階の部屋に戻って荷物をカバンに詰め込み、すぐに部屋を飛び出しました。
(やばいなーもう7時50分...)
8時から荷降ろしがあるので遅れるわけにはいきません。でも幸い現場はもうこの近く、10分あればなんとか。 ぼくは、宿舎の横に停めてあったトラックに向かいました。
(おはよう...)
愛車は霜がついて真っ白。大急ぎで始業点検にかかり、エンジンを始動して更に点検。
そして、すぐに現場に向かい、きのう名古屋から積んできた荷降ろしを始めました。太いワイヤーロープにびっしりと白く霜がついています。
(おーさむ...)
(それにしても、あのおむつ...)
ぼくは荷台に上がって、寒さでパリパリに凍ったビニールシートを1枚づつはずしながらも、さっき宿舎の中庭で揺れていた自分のおむつのことがまだ気になってしかたありません。誰かに見られたら...。
(おばちゃんは、だいじょうぶだって言ってたけど...)


「おう、ゆうさん、やってるねぇ」と突然後ろからの声。振り向くと、田中さんがタバコをくわえながら腕組してこちらを見上げています。
「あっ監督、おはようございます」と、ぼくは荷台の上から応えます。
「まだ、そんなにあわてんでいいからよぉ。それ使うのは1時間くらい後だし、若い衆にも手伝わせるでぇここであったまろうや、な」
「あ、ありがとうございます」
ぼくは手招きされるままにすぐ横の休憩所に入りました。
中は10人くらい入れる広さ。真ん中に石油ヒーターが置いてあって、それを囲うように丸椅子が雑然と並んでいます。
「きょうは冷えるわぁ、なぁ」と監督。
「そうですね。さっき荷台のビニールシートが凍ってましたよ」
「だろなぁ、ここは山ん中だから結構冷えるんよ...」と田中さんは防寒着のポケットからタバコを取り出して火を付けながら言いました。
「それにしても、ゆうさんはまじめやなぁ。こんな早よから仕掛からなくてもよぉ」
「はぁそのぉ、会社からは8時に遅れないように行ってくれって言われてたんで...」
「まぁ、予定はそうだけどな、...こんな寒くちゃ内の若い衆もからだ動かんわ...見てみぃ」
若い作業員の人たちは、皆背中を丸めて、ヒーターの前で縮こまっています。そこへ、田中さんがじろっと視線を向けると、周囲に緊張が走るのがわかります。
「なっ。こいつらもゆうさんみたいにきちっとしてるといいんだけどなぁ...おうお前ら!9時からかかるでぇ、準備しとけや!」
声をかけられた若い衆は、のそのそと立ち上がり、部屋の隅に置いてある安全防具やらベルトやらを装着し始めました。
田中さんは周囲を見ながら、よしよしっていう感じでうなづきながら、急に振り返って小声でぼくにささやきました。
「...でな、どうだった、ゆうさん、きのうは?」
「えっ?きのう...ですか?」
「えっじゃないだろ」って、田中さんはニヤニヤしながらぼくの肩をたたいて、
「例のおばちゃんよぉ...宿舎の」
「宿舎のおばちゃん...ですか?」ぼくはまだ空気が読めてません。
「なぁ、いいことあったろ夜中。ゆうさんみたいのを放っておくわけねーって、言った通りだろ」
「...」
「なっ、きのうも風呂場でいーことしてもらってぇ、このぉー」
(げっ、ばれてる...)
田中さんはもう完全に何かあったと察しています。
ぼくは、夜中におばちゃんが来たみたいだけど、ぐっすり寝ててたし、まして、全く気が付かなかいうちにおねしょのおむつを替えてもらったなんて...ね、言えないもんですから、答えに困っていると、
「まぁーいーわな、若いっていいよなぁ。俺もあと10くらい若きゃなぁ...」
と、タバコをふっうと吹かしました。
「あのおばちゃん有名だからなぁ。夜中に『見回り』とか言って若い衆の部屋に入ってな。そんで...まあ、イイこともあるわな」
「...はぁ...」ぼくはあいまいな返事をしながらなるほどと思いました。
(...だから部屋に来たんだぁ...でもぼくの場合、点検してくれたたのはおむつなんだよね。しかもしっかり交換してくれたし。でも、そんな大きな赤ちゃんが相手じゃ、それ以上ナニする気にもならなかったんだろうなぁ...)
ぼくは、おばちゃんがぼくのことを男じゃなくて赤ちゃんだと感じてくれたことを、すんなり受け入れていました。
(やっぱ、おむつじゃね...)
ぼくだって、やさしいお母さんっていう感情を抱いたんですから、不思議じゃないですよね。
「じゃ、かかるかぁ」と田中さんがゆっくりと腰をあげました。
「はい!」とぼく。
休憩室から出て、荷降ろしの再開です。


それから3時間、荷降ろしは普段よりも多少時間がかかりましたがほぼ順調に終わり、代わりに引き取る重機を少しずつ分解しながら荷台に載せてワイヤーで固縛し終えました。
そして、現場の事務所に寄って書類にサインです。
「じゃぁ、これ積んで帰りますから...」
「ご苦労さまでした鈴木さん。こんどいつ来るのー」と受付の子。ひろこちゃんっていいます。
「えーと、来週の水曜日だったかな...」と、ぼくは壁にかかったカレンダーを見ながら言いました。
実は、ひろこちゃんは宿舎のおばちゃんの一人娘です。住み込みで働くおばちゃんといっしょに、小さい頃から手伝いをしていた気の利く子。これまでも何回か宿舎で見かけたり、話をしたこともあります。
去年、高校を卒業して一旦市内の洋品店に就職したのですが、おばちゃんが腰を痛めたのをきっかけに戻って来て、宿舎近くのこの工事現場事務所に勤め出しました。掃除やら受付やら、もうけっこう慣れてきたみたい。
なので、ぼくが事務所行くと、けっこう愛想よくしてくれて、お茶とか出してくれます。
「よかったー。またお話できるね。鈴木さんが来ると楽しいから...だって...ね、ここって、お父さんみたいな人ばかりなんだもん...シーッ...ないしょよ」と、その子は小さな声で笑いながら言います。
「うん、まあそう...かもね」とぼく。
「今度またトラックの話聞かせてね。私こんなところで仕事してるけど、一度も乗ったことないんだ、あんな大きいの」
「そうだっけ?じゃぁ乗せてあげよっかぁ。このあたり1周くらいなら、まだ時間もあるし。」
「わー、ほんとー?」とにこにこ顔。
「うんいいよ。いいよ。」
「じゃぁ...乗せてもらおうかなー。今なら、ここ少し空けても大丈夫みたい...ちょっと待ってね、片付けちゃうから」
ひろこちゃんは、受付の書類を手早く並べ直して、机の上に『休憩中。しばらくお待ちください』っていう札を立てました。
「さっ、これでいいわ。ちょっと抜け出しちゃおっと...」と、壁際のコートハンガーからダウンジャケットを取って、
「お待ちどうさまー」
「じゃ...」とぼくが玄関から出ようとすると、
「あと、これ。お母さんから預かってきたよ。」
「うん?」
ひろこちゃんは、大きな紙袋を両手で胸の高さまで持って見せました。
「鈴木さんに渡してって」
(げっ、あれだ...)
ぼくは、一瞬で思い出しました。
宿舎の庭で風に揺れていたぼくのおむつに違いありません。
(まさか...)
ひろこちゃんは妙にニコニコしています。
ぼくは、その紙袋を受け取りながら考えました。
(中、見てないよなぁ...)
ぼくはドキドキしてきました。
(まさか、ばれてないよなぁ、おむつ...)
「ねっ、渡したから。鈴木さんの大切な、も・の」
最後を妙に強調しながら、微笑んでいます。
「う、うん、ありがと」とぼくは急に固くなってしまいました。
「じゃ...行こうか」と、ぼく。
ひろこちゃんも玄関から出てきました。
「うれしーなぁ」とにこにこ顔で。


事務所の正面の駐車場には大型車が5台並んでいました。
「あー、あれあれ。あの青いラインの入った...」とぼくはトラックを指差しました。
「うん、あれね」
二人はトラックに近づいて行きます。
「近くだとほーんと大きいね。すごーく高い」とひろこちゃんはハイテンション。
ぼくも、さっきの不安はすっかり忘れて、
「でしょー。この上からだと見晴らしいいんだよ」と運転台を見上げます。
「じゃぁ、どうぞ」とぼくは鍵をあけて、助手席のドアを開けました。
「ここに、左足をかけてぇ...そうそう...そして、そこ持って右足はここに」と乗り方というか上り方を教えます。
「うわー、ほんと高いね。上るのがたいへん」
ひろこちゃんはまるでロッククライミングでも楽しむようなノリで楽しそう。
「だいじょうぶ?」と、ぼくは手伝いながら、助手席に座ったのを確かめてから、
「閉めるよ」とドアを閉めました。
そして、車両の前から右側へぐるっと廻って運転席に乗り込みます。
ぼくはエンジンを始動し、計器類を確認してから発車させました。
「あー、動いたうごいたぁー...」
ひろこちゃんは、まるで遊園地の乗り物にでも乗っているようなはしゃぎよう。
「すごーい!でも、とってもスムーズ。もっとガタンって動き出すのかなって思ってたぁ...」
「そう?」と、ぼくは上機嫌。


運転席正面のインパネコンソールには、普通の乗用車では見かけないスイッチやメーターがたくさん並んでいます。
ひろこちゃんは物珍しそうにあれこれのぞき込みながら、
「これなぁに?」と指差します。
「あぁこれ?このレバーはエキゾーストリターダーのスイッチだよ」
「エキゾー???」
「うーんと、エンジンブレーキみたいなやつ。マフラーパイプの途中を閉めて排気ガスを出にくくすると、エンジンが苦しんで回転が下がるメカ。排気ブレーキって言うときもあるよ。」
「ふーん...」
「例えば、息だって、吸うばっかりじゃ苦しくなるでしょう吐かなくちゃ。」
「うん、吸って吸ってーじゃね、...あー苦しいー」
と、ひろこちゃんはまねをしながら、クスクス笑います。
「じゃぁこれは?」
「ああ、デジタコね」
「...タコ?」
「あぁ、タコじゃなくて、デジタルタコグラフっていうんだけど、これがうっとうしいの。走行時間とか速度とかがばっちり記録されるから、さぼってるとバレバレ。それにね、この型は新しくGPSが付いたからどこにいるか場所まで記録されるんだ。だから寄り道も...」。
「わかっちゃうんだー。すごいけど私もほしくないな、そんなの。」
「でしょー。この前も運行主任がうるさくってさぁ、『鈴木君ちょっと休憩とりすぎじゃない?』だって。高速のパーキングに30分いただけだよ」
(確かにトイレ休憩だけなら長過ぎるかもしれないけど、おむつ交換してると、あっという間に過ぎちゃう...なんて言えないけど...)
「じゃぁこれは?...」
ひろこちゃんの質問攻めは続きます。ほんと好奇心旺盛です。


現場の取り付け道路から表の県道に出て、ちょっとドライブです。
周囲は、お茶の畑が続くなんの変哲もない光景ですが、ひろこちゃんにはいつもと違って見えるようです。
「へー、こんなふうになってるんだぁ」
「えっ? いつも通ってるんじゃないの」とぼく。
「うん、そうだけど、見晴らしがすごくいいから新鮮。だって、ここずっと金網が張ってあるでしょ、でも、トラックの目線だと金網が下にあって、ぜんぜん関係ないの。まわりが全部見渡せるし。」
「そっかぁー、ぼくはこの眺めに慣れてるから、そんなこと考えなかったよ。それに、渋滞してたってずっと先まで見えるから結構運転しやすいんだ」
「でも、おっきいからたいへんでしょ。狭いところとか」
「うん、そうだね...特に町中の路地は結構気を使うけどもう慣れちゃった」
「...すごいなぁ、私なんか絶対無理。だって、お母さんのクルマね、軽なんだけど、この前借りてスーパーに行ったらこすっちゃってぇ...もうショック」
「あらら...」
「ね。だからこんなに大きいの運転できる人って...尊敬しちゃう」
「そ、そんなぁ大げさだよ...」と、ぼく。


トラックは、お茶畑を抜けて集落にさしかかりました。
民家の庭には洗濯ものが風に揺れています。
少しの沈黙の後、ひろこちゃんが遠慮がちに口を開きました。
「...あ、あの、鈴木さん...」
「えっ?」
「...あのぉ、変なこと聞いていい?」
「ん?...」
ぼくは、ピンと来ました。ついに来るものが来たと...。


「あの...ね。さっき渡した...紙袋の中ね...」


~~~『ぼくはトラック運転手さんでちゅ(第21話)』に続く

コメント

Secret

オムツあてたいさんコメントありがとう

ハンドルネームだったんですね。ストレートでわかりやすいです。
そういうぼくのも、ブログのタイトルなんだか名前なんだか...。

ストーリーのほうは、また「娘さん」の方向に行ってますね。ぼく自身、どっちの方にいくのか気分次第なんでわかりませんが、いろんな人を登場させようと思います。

タックンコメントありがとう

今回は、ぼくの普段の様子を少し書いてみました。
実際はあんまり格好よくないんですよ。運転だけなら楽なんですけど、今回みたいに手がかかることもあります。
でも、最近はフォークリフトやクレーンで積み下ろししてもらえることが多いので、以前よりは負担が少ないです。
職場って、やっぱり人間関係が一番ですよね。ぼくなんか、けっこう恵まれてて、みんな良くしてくれるから、これからも続けられそうです。

で、「タックン方式」ですけど、次話に書いてみます。ただし、文章だけでどこまで伝わるか...。

こんにちは、オムツあてたいです.そうなんですハンドルネームです、願望から付けました.
今度は娘さんとの絡みですか?展開楽しみにしてます.私的には熟女キボンですが(* ̄∇ ̄*)エヘヘ

こんにちわ

ゆうやさん、こんにちわ。今回の読んで、トラックの仕事の荷物の運んだ様子やら判りましたね。運転だけでなく、当然降ろす作業の事、現場の環境などやトラックの事が多く理解できました。普段のゆうやさんを見たような気になり、より近親間が得られて良かったです。 小説の中での「タックン方式」どんどん使ってね。ゆうやさんに書いてもらえるなんて、夢のようです。こちらこそ、お願い致します。 先端大学の付近を通ると、ここの建設する際に、ゆうやさんのような方の大型トラックの出入りを想像しちゃいますね。
ゆうやさんへのコメントで、僕のブログへのお返事も兼ねさせて頂きますね。安全運転で頑張ってくださいね。タックンでした。
プロフィール

甘えん坊のゆうや

Author:甘えん坊のゆうや
ようこそ!
ぼくは大型トラックの運転手です。普通とちょっと違うのは、大きな赤ちゃんってことだけ。いつもおむつしてるんだよ~(笑)。
This is Adultbaby diaper (Omutsu) site.

◆◆◆◆◆
掲示板開設しました。
下の『リンク』のところからどうぞ。

◆◆◆◆◆
ご意見、ご要望等は以下のメールへどうぞ。
yuuya062zzz@gmail.com
(メルアドは上記に変更しました)

◆◆◆◆◆
twitter
『yuuya062』

◆◆◆◆◆
禁無断転載(文章・画像全て)

FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2カウンター
訪問総数
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
リンク
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる